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スポーツインストラクターなのに公務員!? ブータンSSIについて

 
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世界平和の実現を目指す
一般財団法人職員

幼・小・中・高・大学での教員経験あり

専門は、教育・国際教育協力・ブータン王国・ガナバンス・反汚職
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はじめに

こんにちは!

最近はnoteにも記事を投稿しているので読んでいただけるとありがたいです。

ブータンに関する記事はこちらをどうぞ!

 

さて、今日はブータン王国の「School Sports Instructor(SSI)」についての話をします。

 

ちなみに「ブータン SSI」と検索すると、主に青年海外協力隊の活動を見ることができます。

 

この記事の対象者は主に

  • ブータンに興味がある人
  • 教育に興味がある人
  • 海外のスポーツについて興味がある人

です。

 

この記事でお知らせしたいことは以下の通り!

  • SSIの役割は主に放課後の運動及び週末のスポーツ大会のサポート。
  • SSIは保健体育教育の授業を行うことはできない。
  • 多くのSSIたちは教員という身分になりたいと思っている。

 

SSIの概要

元青年海外協力隊員の小里さんがSSIについてわかりやすい文章を書いているのでその文章を引用します。

ブータンの初等・中等教育では教科担任制がとられている。保健体育は正規教科とされているものの、その専門性を持つ教員がまだほとんどおらず、各校では他教科を専門とする教員が担当せざるを得ない状況となっている。小里さんの配属校も同様で、保健体育の授業を担当していたのは、スクール・スポーツ・インストラクター(SSI)と呼ばれる立場の女性だった。SSIは教員免許を持たず、球技などを行う「ゲーム&スポーツ」と呼ばれる授業を担当するために配置されているスタッフだ。一方、配属校は道具や設備の面でも体育授業の環境が整っておらず、あったのはクリケットの道具、バレーボールのネット、バスケットボール、サッカーのゴールくらい。そうした状況のなか、小里さんは主に以下のような活動に取り組んだ。

上記の文章からわかるようにSSIは授業を行うことは国から許可されていない。

その一方で現実的には学校現場で保健体育の授業をSSIが実施していることがある。そのことについては学校現場ではグレーになっており、状況的に誰もできないならばSSIがするのは仕方がないという空気感があるようです。

 

また、保健体育は他の教科に比べて重要ではないという認識が根深いようです。

主要教科である、英語・ゾンカ語・数学などの必須科目で点数を取らせることが教員の最優先事項であり、保健体育の優先順位は低いのです。

 

SSIの簡単な契約内容(著者訳)

  • SSIは、2年間の連結契約で任命され、業績に応じて更新されます。
  • SSIは、BCSR-2018と、SSIが教育省/王立公務員委員会と締結した条件を遵守する。
  • SSIは校長に直接責任を負い、学校の規則や規定に従わなければなりません。
  • SSIの主な役割は、School Sports Programの目的に沿って、学校でのスポーツや身体活動を促進・発展させることです。
  • SSI は、スポーツと身体活動の重要性を提唱し、教育して、大勢の参加を促さなければならない。
  • SSIは、食堂の責任者、監視員、寮母などのフルタイムの責任を負ったり、教科を教えたりしてはいけません。しかし、短期的かつ緊急の任務で学校経営者を補佐しなければなりません。
  • SSIはTeacher’s Code of Conduct(教師の行動規範)に従わなければならない。
  • SSIは、学校におけるスポーツや身体活動の計画、調整、効果的な実施に全責任を負います。
  • SSI は、学校カレンダーに従って行動計画を策定し、それに基づいて活動日誌(学校管理者によ る週次承認)を管理し、GSD、DYS のフォーマットに従って年次報告書を校長に提出し、その コピーを関係するゾンカグ/スロムデ教育部門に提出しなければならない。
  • SSIは学校経営者の支援を受けて、適切で十分なスポーツ用具やアイテムを確保し、インフラや施設を適切に維持しなければなりません。
  • SSI は学校経営者の支援を受けて、スポーツクラブを結成し、放課後のスポーツ活動を開始しなければならない。
  • SSIの場合、1週間の労働時間が15時間以上であることが条件となります。
  • SSI は特定のスポーツの中心的存在であってはならない。
  • SSIは、国内外のワークショップ、トレーニング、クリニック、競技会に参加する場合は、適切なルートで教育省の事前承認を得なければならない。
  • SSIの任命と辞任は、教員と同様に行われる。ただし、連結契約条件に基づく異動は認められない。

 

興味深い点は、2年間の契約であるので公務員でありながら契約労働者であること。これはつまり非正規公務員という身分であることがわかります。

 

また、先程の章でも述べたように教科を指導してはいけないことがわかります。

1週間15時間の労働で良いというのは日本にいる私からするとホワイトな労働環境だな〜と思う一方で、2年後の労働契約を掴み取るためには一生懸命働く必要があるのだろうと思います。

 

私的考察

ブータンにおけるSSIの制度は2008年から始まりました。

 

まだまだ発展途上ではありますが、健康の維持向上のために学校に運動を実施する機会を与えるSSI制度は日本よりも進んだ制度であると言えると思います。

 

ご存知の通り、日本の部活動は教員が中心に行われています。

ブータンではその役割をSSIが担っており、仕事の分業が進んでいる良い例だと思います。

 

その一方で、私が現地で関わっていたSSIたちは自分の置かれている状況に不安と不満を述べていました。

・教員と同じ職場で働いているのに給料は教員より低い

・2年生の大学を卒業してSSIになったのに扱いは高校を出てSSIになった人たちと同じでおかしい

・学士の学位を持っていないので、大学院にも行けないし将来の選択肢がほとんどない

 

上記のようにさまざまな声を現場で聞いてきました。

ブータンでは高校3年生までの成績で進む進路がほとんど決まってしまう現状があります。大学に進むには高3の成績がある一定の数字ではないといけないし、大学に行かなければ公務員にもなれない、大学院にも進学することもできません。

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

今回の結論は以下の通りです。

  • SSIの役割は主に放課後の運動及び週末のスポーツ大会のサポート。
  • SSIは保健体育教育の授業を行うことはできない。
  • 多くのSSIたちは教員という身分になりたいと思っている。

 

2021年の現在、School Sports Instructorたちも学校現場で児童生徒たちが楽しく運動やスポーツができるように活動を続けており、ブータン王国国民の健康状態をより良くしていくための政策が実施されています。

 

その一方でSSI制度はブータンの労働市場の闇を表す制度の1つだとも言えます。

 

 

何か他にもリクエストがあれば問い合わせフォームにご連絡お願いいたします!

それでは、ほなね〜!

 

 

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